残業ゼロは残業代ゼロ?神奈川県の“革命”に賛否
全職員の残業を原則なくす方針を全国の都道府県で初めて決めた神奈川県の「残業ゼロ革命」に波紋が広がっている。松沢成文知事は「仕事と生活の調和(ワークライフバランス)を実現し活力ある県庁にする」とぶち上げたが、職員側は「サービス残業や仕事の持ち帰りが横行する恐れがある。『残業代ゼロ』ではないのか」と懸念。専門家の評価も割れている。
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「従来の残業縮減の運動とは根本的に異なる。運動ではなく革命。仕事のやり方をすべて見直す」。松沢知事は10月の記者会見で、来年4月から実行すると宣言。「(現状は)長時間労働が続き、職員は新政策や改革に挑戦する余裕がない」と理由を説明した。
県の案によると、内部向け資料を簡略化、誤字脱字など細かいミスにこだわりすぎない「70点主義」を徹底。残業がどうしても必要な職員は上司に申請、退庁時間を示した「カエルバッジ」を着ける。バッジには「帰る」とかけてカエルのイラストが描かれている。
管理職の残業削減への取り組みは人事評価の判断材料とし、処遇に反映させる。「ゼロ革命」は先進的施策として、ほかの自治体から問い合わせが相次いでいるという。
一方、職員の約5割が加入する県職員労組は、知事の記者発表直後につくったビラで「不払い残業、持ち帰り残業の横行が進むだけ」と題する抗議文を掲載した。
県によると、2008年度の知事部局に所属する職員の残業は月平均15時間で、残業代総額は36億円に上った。だが、県職員労組が08年末に行ったアンケートでは、職員823人のうち51%が「残業代の不払いがある」と回答した。
県は不払いを否定しているが、県職員労組は「今も残業を申請しづらい雰囲気がある。残業ゼロ革命が実施されれば、もっと申請が難しくならないか」と危ぶむ。労組は県当局に制度の詳細を説明するよう求めている。
専門家の意見も分かれる。民間企業で残業削減に取り組んだ外資系下着メーカー元社長のアナリスト吉越浩一郎さんは「素晴らしい取り組み。残業をなくす大目標を決めれば、時間内に終わらせようと仕事の効率化が進むだろう」と評価した。
近畿大法科大学院の西谷敏教授(労働法)は「地方自治体の財政危機で職員の削減傾向がある中で、残業ゼロが実現するかは疑問。現場の実態を精査しないでトップダウンで押し付けることは多くの弊害を生み出す原因になるだろう」と批判的だ。
[ 2009年11月17日 16:23 ]