良品計画―月~金の残業をゼロにする
■残業ゼロとセットの「標準化」と「見える化」
業務の標準化は「見える化」と対をなす。社内に部門別の残業実績や定時帰宅日実施状況、欠品率と在庫手持ち日数、あるいはプロジェクトの進捗などが一目でわかるように「見える化ボード」が掲示してある。
http://president.jp.reuters.com/article/2008/12/15/E5B9EA7A-C72C-11DD-9BDE-CEE93E99CD51-2.php
「確かに残業代も大きなコストですが、一番大きい目的は生産性を上げることです。ホワイトカラーの生産性を上げるのは一筋縄ではいきませんが、単に生産性を上げろといっても放っておくと通常のペースに戻ってしまいます。しかし人間は、締め切りがある、あるいは明後日に企画の提案や昇進試験があるとなれば、能率は通常の3倍や5倍に上がるものです。生産性向上を理屈で攻めてもいろんなエクスキューズが出てなかなか到達点に達しない。そうであれば、9時から7時という枠だけ決めてやるほうがずっと早いと考えたのです」
これまでに打ち出した施策も徐々に効果を上げている。従来60ページもあった販売計画の報告書をA4判3枚に限定し、会議での意思決定のスピード化を図るというやり方もその1つだ。同社は、2年半続いた30%委員会を廃止。2月1日に「業務標準化委員会」を発足し、改革の歩をさらに進める。
「従来の仕事のやり方の視点を変えた効率化に社員も慣れてきています。夜7時に退社しなければならないとなると、単なるガンバリズムではなく、10分、15分の時間で1つの仕事を終えるにはどうするかという効率化する工夫と訓練ができます」(松井社長)
【ここがクリエイティブ@一橋大学大学院商学研究科教授 守島基博】
「敵は内(うち)にある」ことを社員に対し意識付けしていった点が、このケースの先駆性でしょう。多くの企業では、残業が減らない理由を「お客さんのため」「競争環境が厳しくなったから」と、外部の要因に求めてしまいます。しかし、社員が自分自身で残業を減らす努力をしなければ、誰も減らしてはくれません。
上司へ報告するためだけの分厚いエクセル資料をつくったことはありませんか。顧客へのプレゼンでアニメーションを多用したことはありませんか。多くの人は、こういった作業がムダだと気づいている。にもかかわらず、上司の顔や社内の慣習を気にするあまり、アクションに結びつけることができないのです。
松井社長は「どうしたら残業をゼロにできるか」という方法論から入るのではなく、まず「残業ゼロありき」と決めてしまうことによって、社員に自らの仕事のやり方を見直させました。社員は限られた時間の中で業務をやり遂げようと、自分を追い込む。そこに新たな工夫が生まれ、業務は効率化するはずです。
ただ、この試みが、今後も継続するか否かは、企業と社員が「WIN-WIN」の関係を築くことができるかどうかにかかっています。企業側には、コストダウンというメリットがある。では、社員側には何があるか。ポイントは「残業代ゼロではなく、残業ゼロ」であることを社員に理解してもらうことです。生産性向上に給与や賞与で今まで以上に報いることも必要でしょう。そのうえで、余った時間を上手に使えばこんないいことがあるんだよ、ということを社員に対して示すことも重要です。