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骨太の方針2007 “百花繚乱”で改革路線後退

政府が19日決定した経済財政運営の基本方針「骨太の方針2007」。目前に迫った参院選を強く意識した結果、安倍晋三首相が掲げる政策理念や国民の耳に聞こえのよい項目を羅列した“百花繚乱”の内容になった。一方で、自民党などの抵抗勢力が暗躍し、“消えた年金”ならぬ“消えた項目”も多く、小泉純一郎政権が掲げた「構造改革路線」の後退を懸念する声が高まっている。(中山忠夫、那須慎一)

http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200706200046a.nwc

 安倍首相が初めてまとめた骨太の方針は、A4判サイズで52ページ。最少で27ページに収まったこともある小泉政権時代に比べると2倍以上に膨れあがった。

 「安倍内閣で初めての骨太でもあり、ある程度広範にわたることはやむを得ない。(ページ数が増えたのは)項目ごとに見やすくするためで、余白も多くある」

 原案を決定した今月12日の会見で、大田弘子経済財政担当相は、「総花的」との批判に、苦しい弁明に終始した。

 ◆小泉改革「揺り戻し」

 今回の方針の最大の特徴が成長力の強化。労働生産性の向上や地域経済の活性化を盛り込んだ「成長力加速プログラム」を目玉と位置づけている。

 国民に痛みを求めた小泉改革からの「揺り戻し」(自民党幹部)もあり、安倍政権は発足当初から、成長重視を掲げてきた。財政再建でも成長による税収増に軸足を置いており、その姿勢が方針にも反映された。

 国際競争力強化のための生産性向上では、5年間で伸び率を50%引き上げるという「数少ない明確な数値目標」(民間エコノミスト)が明記された。

 グローバルな市場間競争を勝ち抜くため、「金融・資本市場競争力強化プラン」を年内に策定し、証券や商品先物などを総合的に扱う取引所の検討や銀行と証券の垣根規制の緩和も打ち出した。

 小泉改革の「弊害」と指摘され、年金問題が浮上する以前は参院選の最大の争点になるはずだった「格差問題」にも力を入れた。人材や資金を集中的に投入し地域経済の再生を図る「地域力再生機構」の創設もその一つだ。

 だが、一方で先送りされたり、消えていった政策も少なくない。

 一定の条件を満たした社員を労働時間規制の対象外とする「日本版ホワイトカラー・エグゼンプション」。経済財政諮問会議の民間議員は労働生産性の向上で国際競争力を高める“労働ビッグバン”政策の柱に位置付け、導入を迫った。

 ところが、「残業代ゼロ制度」との批判が各方面から噴出。安倍首相は参院選への影響に配慮し1月には早々と今国会への関連法案の提出見送りを決めた。

 国際線の便数や就航する航空会社の決定に政府が介入せず、民間の自由な判断に委ねる「オープンスカイ」構想。5月16日の最終報告では、海外から乗り入れ要望が多い羽田、成田の両空港について、「将来課題」と表現するにとどまった。

 「発着枠が満杯」というのが表向きの理由だが、航空交渉の権益を手放したくない国土交通省や運輸族議員が猛反発したことが影響した。焦点だった羽田の国際化、24時間化も「早朝・夜間の国際チャーター便拡大」と大幅に後退した。

 ◆「3%削減」見送る

 極め付きが、歳出削減の象徴である「公共事業費」だ。

 小泉政権の5年間で約4分の3の水準にまで大幅削減され、昨年度の骨太の方針では、11年度まで「毎年1~3%減らす」との数値目標が決まっていた。今年も民間議員が素案に「3%削減」の明記を求めたが、結局、見送られた。参院選を前に「地方経済への配慮」を求める与党議員らの意向が強く働いたためだ。

 「昨年決めた方針を守っていくのは想像以上に難しい」

 大田経済財政相は12日の会見でこう本音を漏らした。

 骨太の方針を取りまとめる経済財政会議は小泉政権時代、首相官邸主導で郵政民営化などの構造改革を推進する原動力となった。だが、今回は、「役所が予算獲得のため、提案を競い、お墨付きをもらうための会議に成り下がった」(関係者)。かつての“ばらまき予算”への回帰も懸念されるなか、安倍首相の指導力が問われている。

                   ◇

 ≪エコノミストの採点≫

 □BNPパリバ証券 河野龍太郎氏

 ■メリハリが重要だが

 【50点】

 労働力が減少するなかで、日本の労働生産性の伸び率を5年間で5割増にすることを、年限を決めて目標として掲げたことは評価できる。ただ、安倍内閣初の基本計画ということで、多くの項目が盛り込まれているのはやむを得ないといえるが、今年の諮問会議を見る限り、各省での審議会での決定事項を各大臣が読み上げる場になってしまったように思う。

 すべての項目を実現するために、財政再建が滞る事態になるとは思わない。しかし、本来は、重点項目を決めて、必要な政策には十分の予算を配分し、メリハリをつけることが重要だが、結果的に一律で抑制されるということになりかねないと懸念している。

                   ◇

 □第一生命経済研究所 熊野英生氏

 ■ぼやける格差是正策

 【65点】

 景気回復の恩恵を受けられずにいる若年フリーターや中小企業、地方などへの配慮を打ち出した。参院選対策との批判もあるが、経済成長の果実を弱者にも配分しなければ、国民の暮らしが本当に豊かになるとは言い難い。

 ただ、「ジョブカード」や「ふるさと納税」などは耳に聞こえがいいだけで、構造的な問題の解決にどれだけインパクトがあるのか未知数だ。格差是正という本来の目的を矮小(わいしよう)化しかねない。経済が正常化しつつある現在では政策の絞り込みも難しく総花的に映るのはやむを得ないが、全般的に官僚主導との印象が否めない。官から民への改革を逆行させないためにも、首相の強い指導力が求められる。

経済財政諮問会議に臨む安倍晋三首相(手前から2人目)と大田弘子経済財政担当相=19日、首相官邸

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0残業代ゼロについての報道

 法案提出を見送ったのは名前が悪かったから――。一定条件の社員を労働時間規制から外す「ホワイトカラー・エグゼンプション」を巡り、導入を推進してきた経済界でそんな「敗因分析」が広まっている。「高度専門職年俸制」(経済同友会の北城恪太郎代表幹事)といった名称変更案も出てきた。政府内には機を改めて法案提出を探る動きもあり、労組側は「残業代がゼロになる本質をごまかすもの」(連合幹部)と反発している。

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