増える過労自殺 社会全体で関心を高めたい
過労や仕事のストレスが原因でうつ病などの精神障害を発症し、労災認定された人が増えている。
厚生労働省のまとめによると二〇〇六年度、こうした精神障害での労災認定者は二百五人となった。このうち自殺に至った「過労自殺」は六十六人(未遂を含む)にのぼる。ともに前年度の約一・六倍という急増ぶりで、過去最悪の事態だ。
http://www.ehime-np.co.jp/rensai/shasetsu/ren017200705229941.html
背景には、長時間労働やリストラ、成果主義制度などにより労働者にとって厳しさを増す職場環境がある。これは、いうまでもなく認定者だけの問題ではない。その約四倍の労災申請者がおり、申請にまでは至らない「予備軍」も少なくないはずだ。社会全体で関心を高めるとともに、対策を講じることが急務だ。
過労などによる精神障害の労災認定のほか、脳・心臓疾患で労災認定された人も過去最多の三百五十五人(うち過労死は百四十七人)にのぼる。過労自殺も過労死も長時間労働などが心身の健康を損なうという点で問題の根は共通するが、最近、より増加が目立つのは「心の病」だ。
自殺を労災として申請する事例は一九八〇年代は年間二、三件だったが、この十年ほどで増えてきた。二〇〇〇年に最高裁が大手広告代理店社員の過労自殺をめぐる訴訟で示した判断が一つの転機となった。
「会社は仕事上の疲労や心理的負荷が過度に蓄積し、労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負う」との指摘だ。これらと前後するように、過労自殺や精神障害についての労災認定要件が緩和された。
こうした結果「過労死と比べ会社の責任を問いにくい」とする考え方にも徐々に変化が現れている。労災認定などが相次いだのは自然の流れといえる。
もちろん、問題は労災申請や認定にまで至らないよう未然防止することだ。過労自殺に至っては取り返しがつかない。
なにより長時間労働やサービス残業なども抑制が重要だ。過重労働やストレスを低減するには、それぞれの企業風土の見直しや意識改革が求められる。同時に、メンタルヘルス(心の健康)対策が欠かせない。
社会経済生産性本部が昨年行った調査結果によると、約六割の企業でこの三年間に「心の病」が増加したと回答。メンタルヘルス対策に力を入れる企業も約六割と、急増しているようだ。それぞれ実態に合わせて相談・診療体制を充実させたい。
厚労省は過労対策として、残業時間が月百時間を超える労働者には本人の申し出を前提に医師の面接指導を義務づける制度を導入している。過労による労災認定者を出した企業に対する重点調査にとどまらず、指導の強化が望まれる。
気になるのは、労働時間の規制を除外するホワイトカラー・エグゼンプション導入を求める声が根強くあることだ。長時間労働を助長する懸念がある。働き過ぎこそ是正すべき時だ。