御手洗経団連*公益見据えた視点必要(5月28日)
キヤノン会長の御手洗冨士夫氏が日本経団連の会長に就任して一年が過ぎた。安倍晋三政権の発足後、政財界の密着ぶりは一段と強まっている。
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/28668.html
経団連会長は財界総理の異名を取る。政権に寄り添うことだけを考えるのではなく、場合によっては首相に直言することがあってもいい。
二年目を迎えた御手洗氏には、経済人としての国際経験を生かした斬新な政策提言を期待したい。
御手洗氏はこの一年、前会長の奥田碩氏(現トヨタ自動車相談役)と小泉純一郎前首相の二人と同様、政権と良好な関係を築いてきた。
官民一体となった経済ミッションの派遣がその典型的な例だ。
経団連は昨年十一月、ベトナムを訪問する安倍首相に百三十人もの経済人を同行させ、今月の大型連休にも百八十人が首相とともに中東五カ国を訪問した。
政界に人脈が薄いと指摘されてきた御手洗氏に対し、「財界と首相のパイプを太くするきっかけになった。首相の外遊に合わせて毎回派遣すべきだ」と評価する声がある。
しかし、経団連会長に求められるのは、ただ政界と親密になることではないだろう。政権との緊張感を失えば、政財の癒着にもつながりかねない。
先日死去した平岩外四元経団連会長は企業献金のあっせんを廃止し、地球環境憲章を制定するなど、リーダーとしての存在感を発揮した。先人の功績から学ぶことも忘れてはならない。
御手洗氏はこの一年間で六十六本の政策を提言した。
一定の条件を満たす社員を労働時間規制からはずす「ホワイトカラー・エグゼンプション」(残業代ゼロ)の要望もその一つだったが、結局国会への法案提出は見送られた。
財界の提言が受け入れられなかったのは、こうした要望が企業側の論理に偏り過ぎていたからだ。
経団連の提言には、社会の公益を見据えた視点が欠かせない。提言の多さではなく、質が問われている。
経団連は今年の年頭に「希望の国、日本」と題した日本の将来構想、いわゆる御手洗ビジョンを発表した。
ビジョンでは、憲法九条の改正や集団的自衛権の行使の必要性にも言及している。極めて政治的な問題を経団連のビジョンの中に示すことに対し、危惧(きぐ)を覚える国民もいるのではないか。
経済界ではこの一年、製品の安全性をめぐる多くの問題が発生した。非正規雇用の増加や偽装請負の発覚など雇用面での不安も高まった。
こうした足元の問題にきちんと取り組むことこそがまず必要なのではないか。御手洗氏には企業の社会的責任を重視する姿勢とリーダーシップの発揮が求められる。
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