過労自殺急増*放置できぬ長時間労働(5月18日)
仕事の量や密度が増し、責任が重くなる一方で、休めない、悩みを相談できない-。
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/26674_all.html
厚生労働省がまとめた昨年度の労災の認定状況からは、心身ともに疲弊した労働者の実態が浮かび上がってくる。
昨年度、過労やストレスによるうつ病などの精神障害で二百五人が労災に認定された。このうち、六十六人が自殺(未遂を含む)した。
精神障害の認定数、自殺数はともに前年度を六割も上回り、これまでで最も多い。脳・心臓疾患の労災認定も7%増え、過去最多だった。労働環境の悪化を裏づける数字だろう。
現在、企業が業績を伸ばしている背景には、たとえば、社員をパートや派遣労働者ら非正規雇用に置き換えることによる人件費の削減がある。社員数が減ったしわ寄せが残る社員に及び、長時間労働が半ば常態化している。
従業員を大切にする企業の意識が、薄らいでいるのではないか。
脳・心臓疾患の労災認定者について直前数カ月の平均残業時間を見ると、一カ月当たり「八十時間以上百時間未満」と「百時間以上百二十時間未満」がほぼ三分の一ずつを占める。
月の残業時間が八十時間を超えると過労死の危険性が大きくなる。
労災が認定された企業には、医師による面接指導、時間外・休日労働の状況把握などの対応を万全にするよう、労基署が指導・監督を徹底すべきだ。
今回、精神障害の認定者のうち、三十-三十九歳が四割と最も多い。中間管理職か一歩手前の世代だ。
多くの職場で成果主義が導入されている。分業が進み、仕事で支援し合うのが難しい立場の人もいるだろう。悩みを相談できず、ストレスを抱え込む人が増えているのではないか。
厚労省は総合職など事務系の一部労働者を労働時間規制の対象外とする新制度を導入しようと準備を進めたが、労働側から「残業代ゼロ法だ」と猛反発され、断念した経緯がある。
経済界には新制度導入を求める声がなお強い。だが、いまの労働環境を放置したままで導入すれば過労死や過労自殺が増えるのは目に見えている。
安心して働ける環境づくりのため、労働界の行動がこれまで以上に問われている。
厚労省がまとめた数字は労災認定された例に限られる。大半は正社員だ。一方で、心身の不調で職場を去っていくパートや派遣労働者らがいる現実を忘れてはいけない。
政府は今国会で、社会保険庁改革法案の審議を優先している。残業代の割増率を引き上げる労基法改正案は継続審議となる見込みだ。
労基法改正案は労働時間の短縮につながる。成立を急ぐべきだ。先送りは立法府の責任放棄だ。
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