残業代ゼロは誰のため(2)ワーキング・プアの登場
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雇用や労働時間を定める法律の代表は、労働基準法だが、労働組合法、労働関係調整法を加え、いわゆる労働3法がある。そのほか、職業安定法、労災保険法、男女雇用機会均等法などがあり、これらの法律を労働法制という。
ストライキ権を剥奪された公務員関係の法規などもこのなかに入るだろう。また、労働裁判等の判例も重要な役割を果たしている。これらの法律に基づき、会社の就業規則がつくられ、残業をする場合は、労働基準法36条により、労組か労働者の過半数を代表する者と協定し、労働基準監督署に届け出て、残業が行われている。労組がある場合は、会社とのあいだで、労働協約が結ばれている場合が多い。
労働法制の規制緩和はいつから本格的に始まったのか。1980年代には多様な働き方に対応するということで、フレックス時間制や変形労働時間制の導入が始まった。出勤時間をずらしたり、1日8時間を1週間とか1カ月平均で、例えば、10時間働く日と6時間とか4時間労働の日を設け、平均して8時間労働を維持すれば残業代を払わなくてもいいとか、そういう制度が導入された。
そして、1985年、今日の不安定雇用労働者を大量に生み出すことになる労働者派遣法が制定された。このときは、まだ総評・社会党ブロックがあった時代で通訳や速記、ツアーコンダクター(旅行の添乗員)など13業種に限定されて成立(社会党・共産党は反対)し、翌86年から施行された。
1990年代初めは、日本の長時間労働が国際的問題となったこともあり、完全週休2日制が導入され、労働時間の短縮を政府も目標をかかげて推進した。時短(ジタン)という耳慣れないことばが新聞・雑誌にも登場した。
1995年に大きな変化が現れる。経団連の「新時代の日本的経営」の提起だ。1989年、総評が同盟路線の「連合」に吸収合併(反対した人々は、全労連、全労協を結成)された。これを見届け、満を持して発表されたこの提言は、その後の労働力流動化政策を大規模に推進していく財界の進軍ラッパとなった。簡単に内容を解説すると、労働者・職員を以下のように3つのグループにわけるものだ。
●長期蓄積能力活用型グループ……期間の定めのない雇用、管理職・総合職、月給・年俸制、職務・職能給、役職昇進・昇格あり
●高度専門能力活用型グループ……有期雇用、専門部門(企画・営業・研究等)、昇給なし・業績年俸制、昇進・昇格は業績評価、退職金・企業年金なし
●雇用柔軟型グループ……有期雇用、一般職・技能・販売部門、時間給、昇給なし、退職金、企業年金なし
長期蓄積能力活用型グループだけが、将来にわたって会社を担う中核であり、このグループだけに、かつてのような正社員・終身雇用をあたえ、競争させる。あとの2つのグループは、今日でいう、契約社員、派遣労働者、パート、アルバイトなどに置き換えていくという提起なのだ。いってみれば、デパートや大手スーパーで行われていた雇用の分類形態の導入を財界がすべての産業で行うということを表明したものにほかならない。
これを受け、次々に労働法制の改定が行われていくこととなる。98年労働基準法改定……裁量労働制(いくら働いてもみなし労働時間で賃金決定される)を専門職からホワイトカラーに拡大。
●99年労働者派遣法改定……建設・警備・港湾・製造業などを除き派遣労働の原則自由化。
●03年労働者派遣法改定……「物」の製造業への派遣の自由化(期間3年に)。
●労働基準法改定……期限付き労働の1年から3年への延長(専門職は、3年から5年に延長)、裁量労働の導入緩和。
このような法律改定によって、派遣労働者などの不安定労働者が増加していくこととなる。1995年には、非正規労働者は、1001万人だったものが、10年後の2005年には、1633万人に630万人増加し、逆に正規労働者は95年の3779万人から3374万人と約400万人が減少した。労働者全体で不安定労働は3分の1。若者の場合は、半分という状況となっている。
そして、年収300万円時代といわれるように、給与所得者の統計では、1995年に男性の300万円以下の人は、15.2%(431万人)から、2005年には、20.4%(564万人)となった。このような若者(フリーター)たちの年収の平均は、140万円前後とされている。これでは、独立して生活はできない。少子化は政策的に形成されたというしかないのではないか。
22歳から60歳まで働く場合の生涯賃金(厚生労働省・賃金構造基本調査をもとに計算)を比較してみよう。
正規労働者で2億791万円。常用の非正規労働者では、1億426万円。パート労働者の場合は、4637万円となる。要するに、一生パート労働者の場合は、正規労働者に対して、4分の1の生涯所得にしかならない。
経団連の提起からみれば、現状は、労働力流動化の序の口であり、非正規雇用労働者
が全体の70%になるくらいまで推進されることになる。何とおぞましいことか。
次回は、金持ちや大企業優遇を検証しよう。
(堤和馬)
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